台風で予定が台無しですね、仕方がないのでみなさん、テレビの前で錦織を応援しましょう!テニスをやったことがない方も多いと思いますので、今回は、基本すぎてなかなか解説されないようなことを説明していきたいと思います。
ミスを減らすことの重要性
テニスでは、アンフォーストエラーという言葉が良く出てきます。簡単に言えば、相手が良いショットを打ったわけではないにもかかわらず、犯してしまったミスショットのことです。逆に言えば、相手のショットが良かったせいでミスショットをしてしまっても、アンフォーストエラーにはなりません。
このアンフォーストエラーの数がなぜ重要かと言いますと、テニスでは、1本のエースと、1本のスーパーキャッチ、そして、1本のミスが、すべて1ポイントという同じ価値を持つから。そして、同じ価値なのですが、エースを増やすのに比べると、ミスを減らすのが簡単だからです。
サーブは別として、いくらプロであっても、相手が万全の状態で構えているところから、1本のショットでエースを奪うのはとても難しい。なので相手を走らせ体勢を崩し、オープンコートを作りそこにショットを打ちこむ、つまり、組み立てをする必要があります。特に相手がナダルやジョコビッチのようにディフェンスの得意な選手だと、素晴らしいショットを3本も4本も重ねて、ようやくポイントが取れるようなレベルになります。これは全盛期のフェデラーでも難しいことでした。つまり、組み立てている最中にこちらがミスをしてしまう、ということです。
エースを奪ったら1ポイント。でもミスをしてしまったら相手に1ポイント。そしてエースを奪うためには、良いショットを3本も4本も打たなくてはならない。無理にエースを狙いに行くよりも、ミスを減らそうとする方が、効率がよいのです。
このような理由から最近はディフェンスが主流になってきていたのですが、錦織はそこに風穴を空けるような強力なショットを武器に頭角を現してきていて、そのプレースタイルは非常に魅力的です。
ラリーはクロスが基本
では次に、こちらの動画をご覧ください。
お互いの選手が、十分センターに戻る余裕があるのに、ストレート側をあえて大きくあけながらクロスラリーを続けているのがわかると思います。お察しの通り、ストレートに打つ方が、クロスに打つよりもミスしやすいからです。
まず1つ目の理由はネットの高さです。実はテニスのネットはセンターが低くなっていて0.914m、サイドはそれより高い1.07mとなっています。なんと2割近く違う。ストレートに打とうとすると、サイドの高いネットの上を通さないといけませんから、クロスに打つ方が安全ということになります。
2つ目の理由は、ストレートに打つとカウンターを受けやすいからです。次の図をご覧ください。
下の選手がクロスに打ったショットを、上の選手がストレートに打ちました。それに対して下の選手は、クロスにカウンターを打ちます。この時、上の選手はリスクを取ってサイドの高いネットを通しているのに、下の選手は低いネットを通しながら相手を走らせることができます。特に、図のようにバックのラリーからストレートに打つと、フォアのカウンターになるのでさらに分が悪いことになります。
ところが錦織は、バックでもガンガンストレートを狙います。もちろんミスやカウンターのリスクが高いショットなのですが、それを決めきってしまう技術を錦織は持っています。
錦織のすごさ
錦織はテニスのセオリーに真っ向から挑戦しています。なぜ錦織はセオリーに勝てるのか。そのポイントは2つあります。
まず1つ目はショットの角度。次の図をご覧ください。
マルのついているところがバウンドの位置です。相手に攻め込まれたり、サイドアウトしてミスになってしまったりしないように、大抵は上の線のコース、深いところを狙います。しかし錦織が得意なのは下のコース。より浅いところにバウンドさせることで、相手をコートから追い出し、次のショットで逆サイドにエースを決めるのです。もちろん、甘くなれば相手に攻め込まれるリスキーなショットですが、錦織のショットは甘くならないのでとても効果的です。
そして2つ目がショットのタイミング。どんどん前に出て早いタイミングでショットを打つことで、相手が戻る時間を奪います。普通のショットはボールが落ちてくるタイミングで打つのに対して、バウンド直後の上がり際を打つことからがライジングショットなんて呼ばれたりします。クルム伊達なんかも得意とするショットです。これもとても難易度の高いショットですが錦織なら決めてくれるでしょう!
つまりまとめると、錦織はテニスのセオリーを勉強するにはとても不向きな選手です笑
フォームも決してきれいな方ではないと思いますし、マネはしない方がいいと思います笑
しかし、見ていて楽しい選手なのは間違いありません。なぜ錦織のショットは決まるのか、なぜ錦織が異端児なのか、このあたりに注目してみると、テニス観戦がもっと楽しめるのではないでしょうか。がんばれ錦織!