RPGでは、アイテムの値段は世界中どの店でも共通であることがほとんど。でもドラクエ4のトルネコ編では、一時的ではあるもののとなり合った2つの町で武器の値段が大きく違っていて、あちらの町で買った武器をこちらの町で売るという簡単な手法で、お金を儲けることができる。言いかえると、アイテムを運ぶことがお金になる。
これを現実世界に置き換えてみる。例えば日本国内で考えれば、普通の商品は十分に効率化されていて、ある2点間の価格差は、運ぶコストより小さい。つまり、普通にやっていたら商売にならない。そういう意味で、現実の世界は、トルネコの状況よりも、標準的なRPGに近い。
でもなんでも効率化できるわけではない。例えばスキルや知識のように、簡単には運べないものだと事情が違う。人を媒体として運ばなければいけないこの商品は、ある業界では、業界内で底辺に属するような人でも当たり前に持っているほど安価なのに、となりの業界では重宝されるといったことがある。言いかえると、スキルを運ぶことがお金になる。
WEB業界の話
最近では、特にプログラミングなどに関する知識がなくても、WEBサイトを運用していくことは難しくなくなってきた。例えばFacebookやWordpressを使えば、個人でも簡単にある程度のクオリティのWEBサイトをたち上げることができる。その代わりにスピード感が求められるようになり、企業はWEBサイトを制作会社に発注するより、自前でWEB担当者を育てたり、WEB業界の人を自社に引き抜いて内製するようになった。WEBサイト運営は、すでに専門職ではないのだ。
WEBに関する知識しか持たず、ただ単純にサイトを制作するだけでは強みがない。企業が自社で内製するメリットである、業界知識とスピード感に対抗するためには、
- 専門職と言えるような高度なWEB運営
- サイトの全面リニューアルのような、自社で補いきれないような 大型案件
- 他社事例の横展開
というような、内製では対応しづらい需要を吸収していくしかない。
ここで、この3つ目の、他社事例の横展開だが、ただ世の中にどのようなWEBの事例があるか詳しいだけといった表面をなでる横展開ではなく、他社のWEB担当者をそのまま引き抜いてぶつけてやるくらいの深さが必要だ。具体的には、WEBが目的なのではなく、あくまで手段の一つとしてとらえ、他の目的にコミットするスキルや経験を持った人が必要になる。
そのためには、WEB以外の業界から人を引っ張ってくればいい。サイト運営がすでに専門職じゃないということは、例えば30歳からWEB業界に入るハードルだって下がってるはずだ。
WEB業界に10年いるんじゃなくて、他の業界と行ったり来たりする。 人というコンテナに、スキルという商品を詰めて貿易する。そういう仕組みを業界全体で作っていくことが必要じゃないかと思ってる。