シンプルというマジックワード

今売れるテクノロジーの第一条件、それはシンプルさ。

さあ、今回のキーワードは”シンプル”。一見ステキな響きだ。シンプルなサービスは、実装が簡単でバグも少なく、ユーザは見ただけで使い方を把握できる。おいおいふざけんな。

今でもドキドキすることに、iTunesの”同期”がある。「iTunesとiPhoneを同期します」。あらなんてシンプルな機能。これなら実装が簡単でバグも少なく、ユーザは見ただけで使い方を把握できる。おいおいふざけんな。
ざっと考えて、同期には以下のケースがある。

  • iTunesに曲を追加した
  • iPhoneに曲を追加した
  • iTunesから曲を消した
  • iPhoneから曲を消した

上二つはまだわかりやすい。増えただけなんだから、多いほうにそろえればよさそうだ。でも下二つはどうだろう?iPhoneから曲を消したとき、それはいらない曲だからiTunesからも消えてほしいのか、うっかり消しただけだからiTunesから復活してほしいのか。消えてほしい人のシンプルな機能と、復活してほしい人のシンプルな機能は違うのだ。

この機能で実装が一番単純なのは、同期ではなく「iTunesでiPhoneを上書きします」だ。これなら場合わけなんて必要ない。iPhoneのみに入っている曲は?もちろん消えてしまうね。でもそれが本当の意味でのシンプルだ。バカ正直とも言う。
シンプルというワードは今、ユーザが期待したとおりに動くという複雑なニーズをあらわしてしまっている。だからうかつに使ってはいけない。実際にサービスを作ったことない人は使いたがるかもしれないけども。

今売れるテクノロジーの第一条件、それはシンプルさ。

もう一度このフレーズに戻ってみる。本来このフレーズで言いたかったのは、ユーザが使い道を迷わないということだ。言ってみれば、ひとつのことしかできない。

これはマリオブラザーズのスタート直後の画面。不自然にあいた右側、右を向いたマリオは、ユーザに「右に進め」とうながす。それ以外は何もできない。求められているのは、作りの単純さではなく、制約だ。

簡単な設計でモノを作ると、基本的にはユーザの自由度が上がる。これもある意味ではシンプルと言えるが、これは使いやすいとは言えない。ユーザが迷わないように、制約を作りこまなくてはいけない。これは、設計としては単純ではないんだ。

シンプルな動作とシンプルな設計では、シンプルの意味がまるで違う。シンプルな動作のために複雑な設計を積み上げているのがiPhone。本当にシンプルに作っちゃったのがAndroidと言えばわかりやすいかな?