近代の保険には投資の要素もありますが、保険の一番シンプルな形は掛け捨てです。対象もひとつに絞られているとなおシンプルで、掛け捨て生命保険が典型でしょう。世にあふれる保険商品は、例えば医療保険に入院保障などを組み合わせて保険の対象を広げることでバリエーションを増やしたり、投資の要素を組み合わせてお金が戻ってくるようにして、保険の本質から目をそらすようにできています。
保険の本質、保険の値段を決めるプロセスは、こんな感じだと思います。
保険料 = 期待値 + 会社の利益 + コスト
例えば海外旅行に行って死亡率が0.1%、補償額が1000万円だとすると、ベースの保険料は1万円。ここに利益を10%、人件費や宣伝にかかるコストを10%とか乗せたりすると、実際の保険料が12,000円となるわけです。
ここで肝になるのは死亡率、つまり確率です。これがもっとも重要。もっと言ってしまえば確率の元になる統計データですね。しかしこれは絶対に載ってません。パンフに載っているのはだいたい、死亡してしまったときにどんな費用が発生するかであるとか、この保険料が妥当かどうかとまったく関係ないことです。
「もしあなたが亡くなった場合、妻や子供がいないにせよ、葬儀には150万円ほどかかり、親御さんの負担になります。嫌ですよね?」
「それは確かに嫌だな。で、俺がこの旅行で死ぬ確率はどれくらいなんだい?」
例でいうと、この死亡率を0.1%ではなく1%だと錯覚させてしまえば、ベースの保険料が10万円になります。差額の9万円は丸儲け。確率そのものをごまかしたり、「万が一」を誇張して確率から目をそらしたり、いろんな保険や投資を組み合わせてわけわからなくさせるのが常套手段です。生保とかは、生保レディなんて大量に雇えるくらいですから、相当乗せてるんでしょうね。
まとめると、確率の概念を抜きに保険に入ると大損する可能性がありますよということです。確率に目を向けましょうということなんですが、実際は保険に入る必要すらないケースの方がほとんどだと思います。それについてはまたの機会に。